#42

2019.12.18

山徳をスケールさせた Webマーケティング戦略とは?

担当ディレクター:杉守 一樹
毎回、さまざまなジャンルで活躍する方々をゲストスピーカーに迎え、彼らの活動事例などから新たなビジネスにつながるアイデアの糸口を探るディレクターズトークセッション。

2019年12月18日、第42回は、
山徳をスケールさせたWebマーケティング戦略とは?
聞き手は、杉守 一樹ディレクター。

平成2年に創業し、石川県内で幅広いジャンルを取り扱うリユース事業で成長してきた、株式会社 山徳。
そのWebマーケティング活動においては、外注を使わずに自社で展開することで、スピード感のある事業拡大を実現してきたそうです。
今回はそんなWeb活用が重要となっているリユース業界で、山徳のマーケティングを担っているCMO(最高マーケティング責任者)高橋達也さんに、昨今のWebマーケティングのトレンドと、山徳をスケールさせたマーケティングについて伺いたいと思います。

【ゲストスピーカー】
高橋 達也 氏(株式会社山徳 最高マーケティング責任者)

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株式会社 山徳とは

本日のゲストスピーカーは、金沢工業大学情報フロンティア学部メディア情報学科を卒業後、2011年にIT系ベンチャー企業に入社、アフィリエイターなどを経て2016年10月より株式会社 山徳に入社し、2019年4月から同社最高マーケティング責任者に就任した高橋達也さん。

「まず初めに皆さんにお聞きしたいんですが、山徳って何をしている会社だかご存じですか?」

「山徳」と言えば、石川県ではテレビCM等の効果から貴金属買取のイメージが強いが、実はインターネットを活用したリユース品の売買を全国規模で行っていることはあまり知られていない。 貴金属以外は全てインターネットのみで売買し、商材はレトロゲーム、着物、ジャニーズグッズ、トレカ、ブランド品等、ニッチな需要があるものを取り扱っている。

インターネットを中心とした商戦で山徳が行っているWeb施策は
・SEO対策
・MEO対策
・リスティング広告
・ディスプレイ広告
・アフィリエイト広告
・SNS広告
・LPO対策
・インフルエンサー
・オウンドメディア
この中から、今回は来場者からの要望が多かった施策内容を紹介する。

SNS広告

SNS広告とは、Facebook、Twitter、InstagramなどのSNSに出稿する広告のこと。

<メリット>
・正確なターゲティングを行うことができる
・GoogleやYahoo!では届けることのできないユーザーにアプローチできる
・リスティング広告よりも1クリックあたりの単価が安い

<デメリット>
・ターゲティングの自由度が高い分、(初心者だと)設定するのが難しい
・広告でも炎上するリスクがある

<ポイント> SNSによって年齢や性別など利用者の特徴が違うため、自分の商品・サービスを利用するユーザーがどのSNSをどのように使っているのか市場調査をしてから運用していく。
20代30代の女性用ならInstagram、40代以上の男女にはFacebook、20代30代の男女を狙うならTwitter、というように、自分のターゲットがどのSNSにマッチしているのかを考えてから配信することが大切になる。
SNS広告はキャンペーンとの相性がいい。Twitterならリツイートキャンペーン等と合わせて広告を設定すると、普段よりもコンバージョン率が上がる。
SNS広告を見てすぐに買い取りに出したいという人はほとんどいないため、山徳ではSNS広告を出す場合、「そもそも買い取りサービスとは何なのか」という興味・関心を持ってもらう内容にして、認知を広げることを目的としている。
SNS広告はターゲットや時間帯などを設定して出稿できるが、まずは、時間帯等を絞らずに広告を出してみて、反応の良いところに集中していくと費用対効果が高い。
「ペルソナって、初心者がやると『こういう人に来てほしい』という理想像を作りがちになってしまいます。山徳の場合は、まずお客様にアンケートを取ったり、ジャニーズグッズ好きな従業員がSNSを触るときにどんな風に使っているのかをヒアリングしてから、ペルソナを設定するようにしています。」
どれだけコンバージョン率の良い広告を作っても、同じものを出し続けていたら見飽きてクリックされなくなるため、3か月に1回くらいのスパンで新しい広告を作りABテストをして、差し替えていくことも大切だという。
ABテストをする際には、訴求するポイントを分けて広告を作っていく。山徳では、価格・機能・実績等、3つ以上の別バージョンを作り、テストをしている。そして、広告バナーには数字を必ず入れることもポイントとなる。

リスティング広告

リスティング広告とは、主にGoogle広告やYahoo!プロモーション広告のサービスを利用して検索結果に表示できる「検索連動型広告」のこと。クリック数に応じて課金される。
自分で登録したキーワードと、Googleで検索しているお客様が使ったキーワードが一致したときにだけ表示される広告。

山徳ではリスティング広告を集客の中心として運用している。

<メリット>
・モチベーションの高いユーザーに配信できる
・少ない予算(1,000円~)で始めることができる
・リアルタイムで効果を測定することができる
・すぐに始めることができ、すぐに止めることもできる

<デメリット>
・登録したキーワードで検索したユーザーにしか認知してもらえない
・登録したキーワードに競合が多いとクリック単価が高くなる(オークション形式)

<ポイント>
まずは自分の商品・サービスに関係する検索ワードを「完全一致」で登録して運用することがオススメ。

リスティング広告では、完全一致、部分一致、絞り込み部分一致というキーワード設定ができる。
デフォルト設定である「部分一致」のまま運用していると、費用対効果が合わずに予算だけ消費してしまうため、初心者はまず「完全一致」で登録するとコストパフォーマンスが良い。

「これからWeb施策をやっていこうという方は、お金をかけたくないという考えでSEO対策やホームページのリニューアルに手を出しがちなんですけど、実はそこは難易度が高いし、素人がやってもそんなに効果がない、人件費もかかる、と考えると、実はリスティング広告をやったほうがコスパがいいと僕は思いますね。」

LPO対策

LPO対策とは、リスティング広告やSNS広告の飛び先のページ(ランディングページ)で、コンバージョン率向上に特化したWebページを作るために行う施策(ランディングページ最適化)のこと。

<山徳が行っている主なLPO対策>
・広告専用のランディングページの作成
(1ページのみのサイトを作ることによって、申し込みに繋がりやすくする)
・無駄なリンクの削除
・ターゲットに合わせたファーストビューに変更
・コンテンツの追加、削除
(ABテストをしながら追加、削除をしていく。特に削除が大切。文章が増えすぎると離脱する確率が高くなるため、小さいメリットはあえて削除する。)
・申込フォームの最適化
(できるだけ入力項目を減らし、シンプルに)

<メリット>
・直帰率の減少
・コンバージョン率の向上
・リスティング広告のコストパフォーマンスの向上

<デメリット>
・直帰率が上昇する場合もある
・コンバージョン率が減少する場合もある

<ポイント>
競合サイトの分析を行い、他社よりも勝っているポイントを見つけておくと、ターゲットユーザーに響くサイトを作ることができる。

山徳の宅配買取サービスの強みは、仕分けせずに何でも送れるところ。「こういうものはやめてください」というルールがない。送る前に仕分けするという手間がないので、簡単に申し込むことができる。
そういった、他社との違いをファーストビューで見せていくようにしている。

MEO対策

MEO対策とは、Googleマップを対象とした地図エンジンにおいて最適化を図ること。「ローカルSEO」とも呼ばれている。店舗がある場合のWeb施策は、まずはMEO対策から。

<メリット>
・Googleマップで上位表示されやすくなる
・お金をかけずに対策することができる
・GoogleやYahoo!の検索画面上で「食べログ」「ホットペッパー」「ぐるなび」等よりも先に表示される

<デメリット>
・地域に依存する
・悪い口コミが書かれることもある

<ポイント>
・入力できる項目は全て埋める
・投稿された口コミには、評価が良くても悪くても必ず返事をする
・自社商品に関する写真をしっかり投稿する

「Googleマップにもリスティング広告を配信できるようになりました。店舗がある場合は、MEO対策とリスティング広告の合わせ技で、まずは認知度を上げるというのがいいんじゃないかなと思います。」

SEO対策

SEO対策とは、インターネット検索結果で自身のWebサイトを上位表示させたり、より多く露出させるための対策のこと。

<メリット>
・上位表示させることができればお金をかけずに集客することができる
・モチベーションの高いユーザーを集めることができる

<デメリット>
・成果が出るのに時間がかかる
・成果に確実性がない
・Googleアップデートのたびに順位が変動する

<ポイント>
・検索ボリュームの多いキーワードから対策すること
・そのキーワードで上位表示されているサイトの強さを調べること(競合調査)
・検索意図に沿った内容にすること

山徳では、キーワードを調べる方法として以下のツールを使用している。 ■Googleアナリティクス
(Webサイトのアクセスデータを分析できる)
■Googleサーチコンソール
(Webサイトの検索結果を分析できる)
■ヒートマップ
(Webサイトのよく見られているところと見られていないところを色で可視化できる)
■キーワードプランナー
(キーワードの検索ボリュームや関連キーワードを知ることができる)
■Similar Web
(競合のアクセス状況を把握することができる)

ブログで集客したいと考える場合は、まずはGoogleサーチコンソールで、自分のサイトに来ている見込み客がどんな検索キーワードを使用しているのかを調べ、そのキーワードをタイトルにし、悩みを解決する内容のブログ記事を書くのが効果的。

初心者はビッグキーワードを狙うのではなく、ロングテールと言われるニッチで需要が高いキーワードについての記事を書くと良い。それによってドメインのパワーが強くなり、自然とトップページも上位表示されていくという傾向がある。

高橋さんのディレクションでは、こういうキーワードの記事を書きたい、見出しはこれ、という構成を作り、実際に書くのは知識の豊富な従業員が担当している。そのほうが、オリジナリティのあるワードが出てくるので、響きやすくなるそうだ。

「SEOを今からやろうと思っている人には、まずはトップページのSEO対策から注力することをオススメします。」

・タイトルに狙っているキーワードが入っているか
・説明文(ディスクリプション)もきちんと入れる
・タイトルタグh1にも狙っているワードを入れること
・画像のサイズをスマホ用に小さくし、表示速度を上げる

以上をするだけで、競合がいなければ1週間で検索順位が上がることもあるという。

集客をやるうえでGoogleアナリティクスとGoogleサーチコンソールは必ず入れてほしい、と高橋さんは言う。
Googleアナリティクスでは自分のサイトにアクセスしてきた人の性別や年齢等の情報を知ることができるため、来てほしいターゲットから乖離していないかチェックをして、SEOやサービスの改善に役立てる。

Googleアナリティクスを見るときのコツとしては、コンバージョンに至った人と至らなかった人の動きを見比べる等、比較対象を作って確認することで、導線を考え直す材料にできる。

山徳では、リスティング広告とSNS・ディスプレイ広告でコンバージョンのゴールを別に設定している。リスティング広告では申し込みフォームの入力を目的としていて、SNS広告やディスプレイ広告では認知が目的なのでクリック数や滞在時間がゴールとなっている。

「Web施策に慣れていない人はサイトにゴールを設定していないことが多いんです。何を目標に運用していけば良いのか分かるように、まずはゴールを設定してみてください。」

これからの取り組みについて

年々、GoogleやYahoo!などの検索エンジンを使ってサービスを検索するよりも、SNSを使ってサービスを検索する人が多くなっている傾向があるため、山徳では来年は特にSNSの運用に力を入れていくという。

・ユーザーに親近感を持ってもらえるSNSの運用
・LINE@を活用した顧客対応
・口コミサイトに良い口コミを投稿してもらえるように促す導線作り
等のWeb施策を強化していく。

SNSの運用については、担当者に丸投げすると投稿が続かなかったりするため、現在は月1回のミーティングをして、1か月分の投稿内容やスケジュールを決めて運用している。

「メールアドレスを持っていない若い人も多いので、LINE@をメールの代わりに使用して顧客対応しようかなと思って、既に導入しています。LINEはメールよりもレスポンスがいい半面、キャンセルなど離脱率も高いので、いかに問い合わせから申込までを離脱せずに完了させるかが課題かなと思っています。」

これまでの施策を維持しつつ、新しい方法を取り入れていく山徳のWebマーケティングは今後も時代に合わせて変化し続けるだろう。

最後に、高橋さんからWeb施策を始めようとしている人へのアドバイスを。

「まだWeb施策に取り組んだことのない人には、まずは効果の現れやすいリスティング広告を少ない予算からでもいいので始めることをオススメします。既に取り組んでいる人には、今後Googleなどの検索エンジンからのアクセスは減っていくと予想されるので、SNSや口コミ対策に力を入れていくのがいいんじゃないかなと思います。」

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タカハシ@Web集客の専門家
@localwork1


話し手
高橋 達也 氏(株式会社山徳 最高マーケティング責任者)

聞き手
杉守 一樹(ITビジネスプラザ武蔵交流・創造推進事業運営委員会ディレクター、株式会社Dynave 代表取締役)

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