#65

2023.11.16

ゲームを感動体験に!イベントの魅力を最大限に引き出す方法

担当ディレクター:小幡 美奈子

毎回、さまざまなジャンルで活躍する方々をゲストスピーカーに迎え、彼らの活動事例などから新たなビジネスにつながるアイデアの糸口を探るディレクターズトークセッション。

今回のゲストは、eスポーツおねえさんとして活動されている高橋さん。eスポーツの集客力は非常に高いですが、単なるゲーム大会では意味がありません。参加者を盛り上げ、楽しませ、感動させるためには、eスポーツの本質を理解し、みんなが楽しめるイベントにする必要があります。ゲームを超えた感動体験や交流の輪を作る方法、eスポーツがコミュニケーションツールとして活用される可能性について、ぜひ一緒に考えましょう。

ゲストスピーカー: 高橋 侑子氏(eスポーツおねえさん)

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本業は業務支援ツールを開発する仕事をしている高橋さん。ゲームが好きで、YouTubeゲームの実況中継をするなど、個人で活動をしている。その中でもぷよぷよというゲームをみんなで楽しみたいと会を発足させた高橋さん。そこからゲームで遊ぶイベントを企画したり、ゲームセンターでぷよぷよの大会を主催したり、純粋にゲームを楽しんでいた。そこをきっかけにeスポーツの運営にも携わるようになり、eスポーツおねえさんというポジションを確立し、司会や実況中継を担当するようになる。ゲームは単に遊ぶためのものではなく、eスポーツという競技であること、またゲームがコミュニケーションの手段としても活用できることに可能性を感じたそう。現在は、石川県のeスポーツ関係のイベントで運営や実況中継を担当するなど、県外にも活動の範囲を広げている。

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ゲームが好き!という気持ちを形にしたら良いことがたくさんあった


最初に高橋さんの自己紹介を交えて、ゲームとどう関わってきたのかを紹介してもらった。本業はExcelやAccessなどのVBAを使って業務支援ツールを開発している高橋さん。もともとゲームが好きで、ずっと趣味としてゲームを楽しんでいた。好きが高じて週2でレンコンさんという名前でYouTube配信を行っている。

「ぷよぷよ」というゲームが好きで、スキルを上げていった当時は石川県にeスポーツの協会もなかった。高橋さんはゲーム仲間とプレイを楽しんだり、ぷよぷよのゲームイベントを企画したり、ゲームを通じて高橋さん自身が好きで企画していたことが、自分にとってもポジティブな部分を多く反映していたという。

最初は人前で話すことも恥ずかしいと思い、表に立てなかった高橋さんだったが、ゲームの話をするときは、積極的に話すことができたそう。印象的だったのは、飲食店で開催したゲームで遊ぶイベントを通じて、外国人の人とも片言の英語や日本語を使って友達になることができたというエピソードだ。ゲームを楽しむには言葉はいらない。

また、高橋さんはRTA(リアルタイムアタック)というゲームを最初からプレイして実時間でどれだけ早くクリアできるかを競う遊び方でも楽しんでいる。今年、日本最大級のRTA in Japanのイベントに参加した高橋さん。RTA in Japanは、日本で開く大規模RTAイベントで、RTAプレイヤーが一堂に集まり、それぞれの持ちゲームを代わる代わるRTAとしてプレイした。高橋さんはマイナーな「だるま道場」というゲームでRTAとしてプレイをしたところ、ゲームにも注目が集まり、YouTubeのチャンネルの登録者数も伸びたのだ。RTAプレイヤーはひとつのゲームに縛られず、自分の好きなゲームを紹介しあうという風潮もあり、ゲームのジャンルを超えた友達が増えたという。

eスポーツおねえさんとしての活動


当初はゲーム好きな仲間と一緒にプレイを楽しんでいた高橋さん。eスポーツおねえさんとしての活動を始めたきかっけは、石川県青年団さんから団体内のレクリエーションとしてeスポーツ大会に協力したところ、「ゲームって友達同士集まって、ただゲームして遊ぶという認識だったが、ゲーム大会として実況・解説を交えて本気の勝負を初めて観るとゲームとeスポーツは違うと感じた」という感想をもらったときだ。高橋さん自身が好きで活動してきたことが、eスポーツに繋がっていたことに気づいたのだ。それまではeスポーツという言葉にはいい印象を持っていなかった高橋さん。ゲームを通じてコミュニケーションをとるというきっかけ作りになると自身の経験を通して腑に落ちたのだった。

「eスポーツ(esports)」とは、「エレクトロニック・スポーツ」の略。オセロやすごろくなどのボードゲームではなく、ファミコンやDSなどのコンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツマンシップにのっとり競技としてゲームを行う。世界大会も行われており、優勝をすると賞金が出る大会もあるので、目的がシンプルでわかりやすい。それ以外にコミュニケーションや脳の活性化を目的としたイベントも行われている。

高橋さんはeスポーツ大会に協力したのをきっかけに、ゲームを知らない人にゲームの楽しさを伝えるためにeスポーツおねえさんとして活動を開始。お子さん向けのeスポーツ大会や高齢者を対象にしたeスポーツイベントのスタッフやゲーム講師、司会や実況中継を通じて、ゲームを身近に感じてもらえるお手伝いをしている。

イベントに参加した、ゲームにあまり馴染のない人がゲームを通じて「楽しいな」、「自分ももっとやりたい」、「おねえさんにみたいにゲームをクリアできるようになりたい」といったワクワクした気持ちを持って家に帰ってもらうには、ゲームをわかりやすく解説したり操作のポイントを伝えたりする、教育テレビ「おかあさんといっしょ」の歌のおねえさん的存在がゲームイベントにも必要と考え、自ら実行しているのだ。

ゲームのコミュニケーションツールとしての可能性


eスポーツおねえさんとしての活動を高橋さんが語ると、ゲームのポジティブな面が見えてくる。ゲームを通じて一つの目標にみんなでがんばることができること、コミュニティが形成されて、コミュニケーションが活発になること、また自分のスキルを披露することで褒めてもらう、応援してもらえると、自己肯定感がアップするなど、メリットがたくさん見えてきた。

ゲームが肯定的にとらえられている一方で、ゲームに抵抗がある人は「ゲーム依存症」にならないか、を心配している人も多くいると思う。家に引きこもって、昼夜逆転してゲームをし続けてしまうという懸念は今も昔も変わらない。

しかし、以前モチモチトークでも登壇していただいた公認心理師の植田先生のお話によると、お酒やギャンブルに依存してしまうと周りの人にも迷惑がかかることもあるが、ゲーム依存は人に迷惑をかける影響が少ない依存になるという。依存してしまう原因としては、一つのものに対する依存が高くなればなるほど、日常生活に被害を及ぼす影響が大きくなってしまうので、色々なものへ適度に依存しあうことが、健康的な依存ともいえるのである。何においても適度な距離を保つことが大切なのだ。

ゲームを通じて魅力的なイベントにするには


石川県内での数々のゲームイベントに携わってきた高橋さん。初心者の人もゲームが楽しめることが前提だ。そのときに何が必要かをいろいろな角度から考えてみた。eスポーツのイベントはゲーム機がさえあれば成立するものではない。また、ある程度イベントで使うゲームをどんなゲームか認識していないと、必要なものがわからないので導入する前に主催者もどんなゲームか知る必要がある。

一番よくある例として、お子さん向けにeスポーツを体験するイベントを企画するときいいは、一体何が必要になるか。ゲームソフト、ゲーム機(本体、コントローラー、ケーブル)、モニター、電源の確保、延長コード、机や椅子、誘導するスタッフなど、どんな人向けにどんなイベントをするのかで、準備するゲーム機の数が変わってくる。また、子どもは夢中になるとずっと遊び続けてしまうことが考えられるので、いかにみんなに遊んでもらえるかも工夫が必要だ。子どもたちは自分が参加していると思わせると、どんどん引き込まれていく。

さらに、ゲームを知らない人も楽しむイベントにするには、ゲームをしている様子をただ見ているだけでは、ゲームが上手な人の操作は早いので、ゲームのプレイ画面を見ていてもわからないことがある。そんなときはゲームの解説をしてくれる人がいるとよりゲームを理解しやすくなる。イベントの主催者の中にゲームを知り尽くしている人が1人いるとゲームの面白さがより伝わりやすくなる。高橋さんは長年自身でもゲームをしているので、競技中のゲーム解説はとてもわかりやすいと定評がある。こうしたイベントを盛り上げる人の存在も欠かせないのだ。

ゲームをコミュニケーションのツールとして活用してほしい


ファミコンが発売されて40年。当時夢中でゲームをしていた子どもたちはいい大人になっていて、今のゲームを楽しんでいる。ゲームを楽しむ世代は幅広く親子や家族、三世代でゲームを楽しめるため、世代を超えたコミュニケーションツールといっても過言ではない。高橋さんも母親と一緒にゲームの話で盛り上がることもあるという。聞き手の小幡さんもいまだにテトリスでは母親に勝てないそう。
ゲームはやりすぎると良くないというイメージを持っている人も多い中、コミュニケーションのツールとしてゲームを捉え、子どもから大人まで夢中になって楽しむことができるアイテムとして良い方向に活用していくためにどうしたいいかを考え実行していた高橋さん。排除する方向でなく、共存していく形を模索し、人とゲームのいい関係を築けると、きっとプラスになることがあり、イベントを主催するときにはスムーズな運営ができると思わせるトークだった。

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話し手
高橋 侑子氏
(eスポーツおねえさん)

聞き手
小幡 美奈子
ITビジネスプラザ武蔵交流・創造推進事業運営委員会ディレクター(ウェブマルシェ代表)

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