#75
担当ディレクター:小幡 美奈子
行列を生んだ発信術や写真の取り方のコツをインフルエンサーたべのみさんとITビジネスプラザ武蔵の小幡ディレクターがトークショー形式でお届けします。
今回は食の祭典「KANAZAWAおいしいフェスタ」とのスペシャルコラボ!金沢の食文化が一斉に集うこのイベントを楽しみながらお気軽にご参加ください。
ゲストスピーカー : たべのみ 氏(Ndesign代表/株式会社Booom Japan専務取締役/株式会社CAC副社長)
今回のモチモチトーク #75は、10月18日~19日に開催された金沢最大級の食イベント「KANAZAWAおいしいフェスタ」との特別コラボとして18日に開催された。 会場はしいのき緑地の屋外ステージ。秋風が心地よく吹く中、美味しい香りに包まれた空間で行われた。
====================================================================たべのみさんと「食×SNS」のルーツ

SNSの投稿がきっかけで行列ができ、たった一つの動画が店の未来さえ変えてしまう―いまやスマホは、飲食店にとって欠かせない「発信の道具」であり、料理の魅力を社会へ広げる「もうひとつの厨房」ともいえる存在となっている。
登壇したたべのみさんは、もともと飲食店で働いていた。自分のお店の料理を撮ってSNSに投稿しているうちに反応が伸び、個人で投稿するようになった。気づけばインフルエンサーとして多くの店から「紹介してほしい」という依頼が届くようになったという。
現在は、SNS運用代行、飲食店プロデュース、商品開発、新店舗立ち上げなど幅広い事業を手がけている。SNSを仕事にしているというと、特別な機材を使っているように思えるが、たべのみさんが使うのは iPhone1台のみ。 「カメラアプリと自然光があれば十分。大切なのは見せ方」その言葉に、会場の多くが一斉に手元のスマホへと視線を落とした。
たべのみさんの最も有名な実績のひとつが、 SNSだけのプロモーションだ。オープン初日に約60人の行列を作った。一体どうやって、そんな影響力を生み出しているのか。たべのみさんはその秘訣を3つにまとめて紹介した。
① 動画の最初の2秒で勝負が決まる
ユーザーは、最初の2秒で見るかどうかを決めている。最初が弱いとすぐに次の投稿へスキップされてしまうため、料理の映える瞬間をトップに置くよう、事前に台本は作成せず、撮影時に構成を考えるという。
そのため、撮り残しのないように一度の撮影で100〜200カットほど素材を撮影することも珍しくない。
② 最後まで見てもらう構成をつくる
「Instagramでバズるための指標は視聴維持率。最後まで見られる投稿がアルゴリズムに強い」―”いいね!”はそこまで重視してないという。
③ プロセスを見せる
「出来た料理だけを見せるより、できるまでの過程を見せる。これがいまの時代の共感」―川北町の屋台ラーメンの例では、オープン前から屋台制作の様子をSNSで公開し、ファンを増やした結果、初日から大盛況となった。お店の物語が、メニューよりも人を惹きつけるのだ。
会場では熱心に耳を傾ける人もいて、その言葉が飲食関係者やSNSユーザーにとって非常に実践的であることがうかがえた。
食べ物が美味しく見える撮影ポイント

トーク中盤では、たべのみさんが実際に食べ物を持ち込み、会場の参加者がその場で撮影を実践する時間が設けられた。たべのみさんが伝えた撮影のポイントは次のとおり。
● 写真の比率は「16:9」
SNSで最も映える比率であり、文字入れもしやすいためおすすめ。
● 食べ物を前、ドリンクを後ろ
被写体の立体感が出て、奥行きのある写真になる。
● 余白を残す
文字入れをしたときに見やすく、構成しやすい。
● 真上ではなく少し斜め
素材の色や立体感を一番美しく見せる角度。
● 加工は最小限
「食べ物は加工しすぎると嘘っぽくなる。光の角度で十分美しく見える」とたべのみさんは言う。加工アプリは使っていないそう。
たべのみさんのInstagramのアカウントを見ながら、自分の撮ったものと比べてこんなに違うものなのか、という驚きと共に、会場で購入した飲み物や食べ物を被写体に撮影を真似している人も見られた。
SNS運用のリアルな悩みと回答

「どうすればバズるのか?」「伸びない時期をどう乗り越えるか?」という悩みについても投げかけてみた。たべのみさんの答えは、非常に現実的かつ励まされるものだった。「インスタは最初伸びない。20本投稿しても反応が薄いのは当たり前。
ただ、あるタイミングで急に伸びる。その瞬間を迎えるまで、積み重ねることが大事」だという。さらに、「最初はInstagramよりTikTokの方が気軽に始めやすいので、投稿の型を練習してみるのも一つの方法」とアドバイスがあった。
またSNSの相談で最も多い悩みが「顔出ししたくない」。たべのみさん自身、顔出しは避けているという。「顔じゃなくて気配を出せばいい。後ろ姿や手元だけでも人が関わっている感じは伝わると思う」安心感を保ちながら発信できる方法に、深く頷く人も見受けられた。
子どもや若い世代のSNS利用についても話題が及んだ。たべのみさんは、撮影・編集よりもむしろ 「投稿前のチェック」を重要視していると明かす。
・不要な個人情報が映っていないか
・店に迷惑がかかるものが含まれていないか
・批判を受ける可能性がある背景がないか
「SNSは楽しいだけじゃなく、自分を守るための道具にもなります」その言葉には、発信者としての覚悟と責任が伝わった。終盤では、たべのみさんが自身で立ち上げる新店舗についても語られた。 12月にオープン予定の「揚げパンサンド専門店」である。これまではプロデュースが中心だったが、今回は自分が責任者となって挑戦する。「できるまでのプロセスもSNSで公開していく」と話していた。オープンの期待が今から高まる。
まとめ
今回のモチモチトークは、 KANAZAWAおいしいフェスタという「リアルな食の現場 × SNS」というデジタルの発信力が融合した特別な回だった。参加者が実際にスマホを手にとって、アドバイス通り撮影している姿があり、聞いたことをすぐ実践していた。 あなたの一枚の写真が、誰かの行きたいにつながるかもしれない。今日の学びを発信してみてほしいという言葉で締めくくられた。金沢の青空の下で行われたトークショーは、食と発信の未来を体感する、濃密で充実した時間だった。
話し手
たべのみ 氏(Ndesign代表/株式会社Booom Japan専務取締役/株式会社CAC副社長)
聞き手
小幡美奈子(ITビジネスプラザ武蔵交流・創造推進事業運営委員会ディレクター/ウェブマルシェ代表)
