企業紹介

Vol.1
金沢の「もの」の文化と魅力伝える

本物にこだわり続ける

-中島めんやの郷土玩具は、年賀切手の図案で目にしています。何度も図案に採用されていますが、全国に数ある郷土玩具の中で、中島めんやの工芸品が採用されるのはなぜでしょうか。

仕上がりには絶対の自信を持っています。当社では一貫して本物にこだわってきました。国外で仕入れ、最後の仕上げだけを国内でという産地が少なくありませんが、金沢に伝わる技術と文化を守り、素材や受け継がれてきた郷土玩具や工芸品の文化や魅力をしっかり伝えているという自信があります。おかげさまで、昭和30年に「加賀八幡起上り」、昭和35年に「米食いねずみ」、平成4年には、「猿の三番叟(さんばそう)」と当店の郷土玩具を年賀切手の図案に採用していただきました。今年平成22年は悪魔を追い払い、福を招くとされる「加賀魔除虎(かがまよけとら)」が採用されるなど皆さんに親しんでいただいています。

-「めんや」という商号ですが、おめんが主力商品ではありません。店の名前の由来について教えてください。

文久2(1862)年というから、ちょうど坂本龍馬の(活躍した)時代、初代が村芝居の小道具、踊る時のお面を作ったのが「めんや」の始まりです。「めんや」には「顔のある形を創造する」という意味も込められているんです。

-芝居のお面づくりがものづくりの原点だったということですね。

獅子舞や芝居の小道具を作りながら、大正時代からは工芸品、贈答品などを作り初めたようです。戦後、加賀八幡起上がりや加賀人形に仕事が移っていきました。特に昭和30年代からは年賀切手の図案に当社の郷土玩具が採用されるようになり、全国の方に知っていただくようになりました。

-工芸品が年賀切手の図案に選ばれると注目を集めるのではないでしょうか。

うれしい悲鳴といいたいところですが、決定から新年までの期間が短く、この間に作る数には限りがあり、今年も加賀魔除虎を求めるお客さまにはお待ちいただき、ようやくお渡しできたほどです。

原材料の確保に苦労

-工芸品の伝統を守りながら、仕上げるためには様々な工夫をされているのでしょうね。

加賀人形は、桐のオガクズを糊で固めて原型を作り、 貝殻の粉とニカワを混ぜた粉を塗り重ねて素地を仕上げます。顔に表情のもととなる切り込みを入れたうえで、絵の具でひと筆ずつ描いていきます。八幡起上りは型に和紙を貼って形作っていきます。伝統を守るといいながら、材料や原料は変わってきています。時代とともに、和紙や貝殻、ニカワも昔と同じものを確保するのはむずかしく、品質と量を保つために工夫をしています。作業場もクーラーを入れるわけにはいかず、職人さんは夏場、サウナのように温度の上がる環境で、季節によって原料の配合を変えるなどの技術でよりよいものを作りだす工夫をしています。職人さんの苦労には頭が下がる思いです。

-歴史ある中島めんやの7代目として新しい試みは考えているのか。

正直、若い時には、加賀人形や加賀八幡起上りのデザインを変えてみたり、新しい色を加えてみたりと手を加えてみたが、売れずに残ってしまったことが何度もありました。結局、お客様は目新しいものを求めるのではなく、変わらない「ものの良さ」だと痛感しました。いい勉強になりました。販売については、ネットによる通販を始めています。ただ、お客さまの中にはネットで見て、お店を訪れ、「ネットで見たあの商品を確かめたい」と実際に、手で触れ、目で見てお買い求めになる方も多い。あくまでもネットは扱っている商品を知っていただく手段だと思っています。

後継者育成が課題

-伝統ある店を続けていくための取り組みは考えていますか。

後継者の育成が一番の課題だと考えています。私たちは、芸術的な美術作品を作っているわけではありません。研修所があるわけでもなく、二年や三年で人は育たず、人材を確保する難しさを抱えています。夏休みに公民館で八幡起上りの絵付け体験をしてもらうなど、関心を持ってもらえるような取り組みをしています。

-中島社長としてのものづくりのこだわりについて教えてください。

今の私の仕事は、社長業として管理や営業の仕事が四割、製造にかかわる仕事が四割、そして地元武蔵商店街振興組合の理事長としての仕事が二割です。金沢市内のいくつかの大きな企業に贈答品として当社の工芸品を使っていただいています。先端技術やIT関連など、伝統文化とは異なる分野の企業が、国外や県外のお客様に金沢の伝統や文化を知っていただくということでお使いいただいているのだと思います。お客様の期待にこたえるためにも、ものの良さを分かっていただき、その良さを伝えるために汗をかいていきたいと思っています。

文:加茂谷慎治、写真:木和田里美・山岸 浩也、動画:松尾 雅由

取材日:2010年7月15日

編集後記

モノが売れるか売れないかは、女性に「かわいい!」と言わせられるかどうかにかかっているとか。その点、中島めんやの加賀八幡起上りは、福々としたお顔でほんとにかわいい。ねらっているわけではなく、素のままのところが良い感じです。
このかわいさ、アートな人々のアンテナにもひっかかっているようで、最近、地元の若手アーティストが加賀八幡起上りに絵付けするイベントもあったそう。伝統に遊び心を加えて再解釈していくと、新しい情報発信ができるかも。(河原あずみ)

会社概要

企業名 株式会社中島めんや
会社所在地
石川県金沢市尾張町2丁目2-18
設立 1862年
従業員 5名
事業内容 加賀人形・郷土玩具製造販売
URL http://www.nakashimamenya.jp/

社長プロフィール

氏名 中島祥博(なかしま・よしひろ)
生年 1959年
趣味 スポーツ・料理

手形

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