企業紹介

Vol.4
日本一の下請け業者を目指し、学び続ける職人集団

製缶技術を環境事業に活かす

-製缶技術とは、どのような技術なのでしょうか。

製缶とは、金属の板を切ったり、曲げたり、溶接したりして加工し、立体的な構造物をつくりあげる技術で、そもそもボイラー設備や圧力容器の製造を通して発達しました。かつて製缶工といえば、溶接加工とベンディング技術に優れた職人の代名詞でした。
ただ近年は簡易ボイラーが普及したことで、圧力容器のニーズが低下していますから、製缶技術をもとに、金属加工のあらゆるものづくりへと各社が事業をシフトさせてしています。

-小林製缶では、現在どんな事業に力を入れているのですか。

当社では、雨水タンク、油タンク、薬品タンクなどのタンク類の設計・施工、各種配管工事に加えて、環境関連機器の製作を行っています。現在、特に力を入れているのが環境分野です。製品としては、配管とタンクと機器を架台の上に組み合わせた排水処理プラントや、伊豆天城山の噴火によって生まれた天城坑火石を用いた水の改質装置があります。

-今年度から新事業に取り組んでいると聞いています。

産業廃棄物の乾燥に用いられる「減圧乾燥機」の製造・販売です。処理槽内を減圧することで、低温で乾燥処理を行うことができるのが特徴で、食品残渣をはじめ、おから、焼酎原料の麦の搾りかす、汚泥、家畜のし尿など、さまざまな原料に対応できます。食品残渣などは、乾燥させて減量することで、廃棄物処理費が軽減できます。またエコフィード(食品残渣などを再利用した家畜の飼料)や、肥料として活用することもできます。バイオマス資源として活用する方法も模索しているところです。

-導入事例はあるのですか。

今年、東京八王子の豆腐メーカーに第1号を納めました。豆腐を製造する過程では、大量のおからが産業廃棄物として発生します。そのメーカーでは年間200トンのおからを処理していますが、乾燥機を導入することで100分の1の2トンに抑えられます。

下請けを究め、技術を究める

-どんなものづくり企業を目指しているのですか。

私たちのものづくりは、下請けが主流です。数多くの会社の下請けをすれば、やがてどんなニーズにも対応できる独自の技術が培えます。私が師と仰ぐ、稲盛和夫さんは、「日本一の下請け業者」ともいうべき京セラの創業者で、「京セラでは社員全員が、下請け業者であることを誇りに思っている」と語っています。私もそれにならい、下請けを究めたいと思っています。
実は昨年は当初B to Cに重きを置こうという方針を打ち出していたのですが、同じ年に経営方針を3度変え、最終的に下請け型で行こうと決めました。朝令暮改ではありますが、時代の変化の先を行くためには、朝令暮改も必ずしも悪くないと思っています。

-全社員7人、うち技術者は4人と、少数精鋭のものづくりをしています。

当社は、「私達は、地球の将来のために“モノづくり”を通して、現場と人に役立つ会社となることを宣言します」というミッションステートメントのもとに、「1.やり通す精神 2.汗をかく精神 3.チャレンジ精神」という「コバカンスピリット」を掲げています。これは全社員の思いを出しあって決めたものです。社員はみな、私より先にこの文言をそらんじ、実践に移しています。

学び続けるスペシャリスト集団でありたい

-経営者と社員の距離の近さ、風通しの良さが感じられます。

数年前から定期的に社員との個人面談を行っています。当初は時間も無制限で、不平不満も何でも聞くというスタイルだったので、仕事が終わってから深夜まで、7時間話し合った社員もいます。

-社員教育に非常に力を入れられています。

社員の希望を聞き、県内外の同業者の工場見学にも行かせることもあります。実際、他社の優れているところ参考にし、自分たちのものづくりに活かすことができています。いわゆるベンチマーキングですね。
リーマンショックの影響が色濃かった昨年は、仕事とは何か、働くとは何か、ひいては生きるとはどういうことか、ということについて、社員に考えてもらう時間を多く持ちました。こんなたいへんなときに勉強が必要なのかという人もいますが、周りを見渡せば、生き残っているのは学ぶことを怠らなかった企業ばかりです。

-社員全員が経営を自分のこととして考え、一丸となっている様子がうかがえます。

彼らには「一生わしにつきあえ」と言っています(笑)。これは冗談じゃないんです。退職しても、ものづくりのスペシャリストとして若手を指導してやってほしいんです。

文:河原あずみ、写真:山岸 浩也、動画:相羽 大輔

取材日:2010年8月12日

編集後記

失敗から学び、競合他社から学び、社員同士の勉強会でも学び。とにかく社長も社員の皆様も勉強熱心。一方では、社長が研修で教えた事を社員の方から逆に指摘されたエピソードなど、嬉しそうに社内の出来事を話される小林社長の姿がとても印象的。
現状に満足せず、常に先を見て「技」を磨き新しい商品の開発にチャレンジする姿勢と、会社のビジョン作りから社員全員が積極的に参加している「人」の力、その手から生み出されるタンクや造水器を見ていると、そこに込められた「ココロ」が自然と伝わってくる。これぞものづくり企業のお手本とも言える姿を見せて頂いた取材でした。(相羽 大輔)

会社概要

企業名 株式会社小林製缶
会社所在地
石川県金沢市三池町300番地1
創業 1952年
会社設立 1965年
従業員 7名
事業内容 各種タンクの製造・配管、廃水処理プラントの製造・配管、鋼構造物製造、造水器の製造・販売
URL http://www.kobacan.co.jp/

社長プロフィール

氏名 小林雅治(こばやし・まさはる)
生年 1945年
経歴 京セラ(株)の稲盛名誉会長が塾長を務める盛和塾に学ぶ。座右の銘は乾坤一擲(けんこんいってき)。環境問題に関心が高く、石川県省エネルギー推進協議会の立ち上げにも関わる。

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